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夏至の魔法

ヘルガの結婚のWAKAKOです。

今この瞬間に繋がるご縁に感謝いたします。

 

ファッション誌のインタビューライターをしていた頃のこと。

ある女優さんに「自分を見失うほど人を好きになったことはありますか?」
という質問をした。

彼女は、感性のままに言葉を紡ぐところがあり、時として奔放な印象を与えるけれど、
ふんわりと柔らかな空気感を纏った女性。

 

私が身につけていたブレスレットに目を止め「キレイね。手作り?」と、
小首をかしげて見入る仕草が
子猫のように愛らしかったのを覚えている。

 

「自分を見失うほど好きな人」

 

そう呪文のように私の質問を繰り返し目を伏せた彼女。
タイの寺院で見た羽根を広げた美しい仏像のような表情。

 

嫌な質問だった?
私は時々、そんな質問をしてしまうライターだった。

 

撮影スタジオのメイクルーム
壁一面の鏡に私と彼女だけが写っている。

 

長い沈黙。
私は彼女の心臓の鼓動を感じるくらい
息を詰め全神経を集中していた。

 

軽く耳鳴りがした。

次の瞬間
私と彼女は、雨上がり夜の月を、ふたりで見上げていた。
冴え冴えと怜悧な光を放つ鎌のような三日月。

 

見上げる彼女の頬には涙が止めどなく流れ落ちる。
まだ若い、20歳くらい。
傘もささずに歩いたのか
赤いワンピースは雨に濡れていた。

 

彼女の想いが私の中に入ってきた。

「あの人への想いを、あの鎌のような月が一瞬で切りとってくれればいいのに」

 

一瞬で切りとってしまいたい想い・・・・。
成就することのない恋。

 

気がつくと、いつの間にかメイクルームの鏡の前。

雨上がりの樹の匂い
蒼い夜に滲む三日月
彼女の濡れた頬

 

1秒にも満たない時空を超えた時間
たしかに私は、彼女と一緒に月を見上げていた。

 

けれど、目の前の彼女は
「そんな風に人を好きになったことはないかな・・・」
と優しげに微笑んだ。

あの時、愛する人に伝えられなかった言葉を夜の空に放ち
鎌で切りとるように想いを断った。
彼女は、微笑みながら嘘のつける大人になっていた。

 

インタビュー中に起こった
時空の隙間をすり抜けるような出来事。

 

そうだ、あの日は夏至だった。

 

夏至、肩からするりと衣を落とすように地球がエネルギーを変える日。

 

その日から
インタビュー中にだけ、ごくたまに起こる魔法のような瞬間。
これはいったい何なんだろう。
心理学やスピリチュアル系の学びに答えを求めたこともあった。

 

今は、マリッジサロンで会員さんの「ハートを開いて」
ご縁を繋ぐ時、あの魔法の瞬間は訪れる。

 

悲しいことも、不安なことも、許せないことも
どんな出来事も大きく弧を描いて祝福に還る。
そのためにだけ魔法は起こる。

 

夏至の魔法 その後

夏至の日のインタビュー後しばらくして
一緒に月を見上げた女優さんは結婚しました。

撮影スタジオを後にする彼女が、わざわざ私のところに来て
「おつかれさまでした。・・・ありがとう」
そう言って微笑んだ顔は「女優の顔」ではなくナチュラルで嘘のない
「そのまま」の彼女だったような気がした。
「あなたは、きっと幸せになれる」
根拠はないけれど、そんな確信があった。

 

どんな時もあなたのミカタ
今も祝福は降りそそいでいます。

WAKAKO